リソグラフィ用に分子汚染モニタリングを最適化 (305.2 KB)
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概要
リソグラフィで分子汚染を監視するという新しいアプローチをご紹介いたします。最新の技術革新により、試料管による影響を最小限に抑え、感度と安定性の向上を実現。継続的なリアルタイムモニタリングが可能となりました。これらの改善点は、一箇所の集中監視を目的とした小型の低価格モニタ(一点集中型監視モニタ)に反映されています。複数箇所監視システムよりも一点集中型監視モニタが優れている点は以下の通りです:継続監視、汚染の見逃しゼロ、試料管の長さが2-3メートルと短い(複数個所監視用は20-30メートル)、5倍から10倍の感度の良さ。感度と安定性の向上は、分子汚染監視専用モニタに反映されています。分子汚染モニタは同じ場所で継続的に試料採取を行い、試料平均値は検出限界を下げるために効果的に活用されるからです。この分子汚染モニタは、汚染濃度が低く、安定性の高い、化学的にフィルターされている環境に最適です。自動監視ソフトウェアを利用して、1分毎のデータと長期間監視による平均値を同時に出力することができます。1分毎のデータは汚染が発生したことを瞬時に感知するために用い、最低レベルの感度で継続的な監視を行うことにより取得した長期監視平均値で監視場所の全体的な汚染状況の推移を把握することができます。
キーワード: 分子汚染、イオン移動スペクトロメトリ(IMS)、AMC、アンモニア、NH3二酸化硫黄、SO2
はじめに
リソグラフィで分子汚染を監視するという新しいアプローチをご紹介いたします。最新の技術革新により、試料管による影響を最小限に抑え、感度と安定性の向上を実現。継続的なリアルタイムモニタリングが可能となりました。これらの改善点は、一箇所の集中監視を目的とした小さいサイズの低価格モニタAirSentry IIに反映されています。以前は、大規模な分子汚染の継続的監視を行うには多大な費用がかかりました。
従来の分子汚染監視システムは、複数個所の気中試料採取システムを分析装置に接続していました。可能な限り低コストでより多くの場所を監視する、というニーズに応え、今回の新しいアプローチでは監視作業の通常作業化を実現しました。また、半導体生産工場の193nmという高いハードルが設定され、現行の限られた監視技術では難しくなってきています。従来の監視方法における最大の障害は以下の通りです:
- 各場所で一日に行う測定の時間と記録の短さ
- 試料管の長さによる影響
- 試料採取場所周辺の濃度が大きく異なる場合の分析装置の反応時間とクリアダウンタイム
- 感度を上げるために必要な平均値取得機能が低すぎる
例えば、60箇所の試料採取を行うシステムで10分毎(パージ9分、測定1分)の測定サイクルを実行した場合、すべての箇所の測定に600分、10時間もかかってしまいます。測定を実施している以外の箇所は9時間59分もの間、監視されていないことになります。明らかに、この監視方法では品質管理を行えません。
従来の複数個所試料採取システムよりも一点集中監視型モニタの方が優れている点は以下の通りです:
- 継続的な監視
- 汚染を見逃さない
- 試料管の長さが2-3メートルと短い(複数個所監視用は20-30メートル)。試料管を短くすることにより、汚染分子と採取管表面の汚染の相互作用を最小限に抑えることが可能。
- 従来の機器より感度が5-10倍も向上
感度と安定性の向上は、分子汚染監視専用モニタに反映されています。分子汚染モニタは同じ場所で継続的に試料採取を行い、試料平均値は検出限界を下げるために効果的に活用されるからです。例えば、1つのアプリケーションでは、1分間の検出限界は120ppt、60分間の平均は8.2pptです。汚染濃度が低く、安定性の高い、化学的にフィルターされている環境に最適です。自動監視ソフトウェアを利用して、1分毎のデータと長期間監視結果の平均値を同時に、かつ個別に出力することができます。1分毎のデータは汚染が発生したことを瞬時に感知するために用い、最低レベルの感度で継続的な監視を行うことにより取得した長期監視平均値で監視場所の全体的な汚染状況の推移を把握することができます。
原理
気中や表面上の化学物質の軌跡を確認するための強力な技術としてイオン移動スペクトロメトリ(IMS)が採用されています。一般的に、空港におけるセキュリティ検査システムや化学兵器感知システムに採用されているIMSは、半導体、フラットパネルディスプレイ、ハードディスクドライブ、製薬、石油化学製品などの生産分野における微粒汚染物質問題でもその威力を発揮しています。本資料では、アンモニア、アミン、酸性物質のような汚染物質を監視するフォトリソグラフィエンジニアのニーズに応えるためのシステムとして最適化されたAirSentry�IMS監視システムの結果を紹介しています。
IMS監視システムにはIMSセルが含まれています。試料を分析に回し、セル出力信号を処理するものであり、イオン体ではない検体を抑制するために特定のイオン化制御試薬と試料流をミックスするものです。IMSセルの多くは、イオンを生成するためのイオン源、イオンが分離領域やドリフト領域へ誘導されないように制御するための電子シャッター、ドリフト領域全体に電場勾配を作るための高圧電流、信号を時間の関数として生成するためのアンプへ接続されたイオンコレクタを含みます。分析は気圧で行われ、1回のイオンスキャンは最短で20ミリ秒という速さで処理されます。
イオンシャッターが開いた時、イオン試料は、電界によりイオンコレクタに押し出されるドリフト領域に解放されます。異なるイオン移動度を持つイオンの種類『K』は、異なるドリフト時間『TD』でイオンコレクタに到達します。イオン移動度はドリフト管の長さ『L』、ドリフト管の電位差『V』、ドリフト時間を利用して計測することができます(1)。
このように、ドリフト時間の長いイオンのイオン移動度は低く、ドリフト時間の短いイオンのイオン移動度は高いのです。衝突による運動量移動があったと仮定し、イオンがボルツマン的に分布、衝突は二体衝突、イオンのエネルギーの多くは熱エネルギー、イオンは低電界に露出していた場合のイオン移動度は以下のように推測できます(2):
図と表はPDFをダウンロードしてご覧ください。
『K』がイオン移動度、『q』が電子電荷、『E』が電場勾配、『N』がドリフト管内の総合濃度、『Ω』が衝突場所、『m』がイオン質量、『M』が中性分子質量、『k』がボルツマン定数、『T』が温度とします。(1)と(2)の検査方程式は、IMSシステムにおいて、イオンのサイズと質量またはイオンクラスタが、イオンを各イオン固有のドリフト時間で分離させる、ということを示しています。この2つの特性により、IMSセルが特定の検体を認識し、監視できるのです。
監視システムのパフォーマンスの最適化には試料供給システムも含まれます。試料供給システムは供給システムと監視中の気中試料との間の相互作用を最小限に抑えるようにデザインされていなければなりません。管にはPFAやPTFEのような、可能な限り短い吸引ラインと不活性素材を使用し、コネクタは迅速な反応時間と正確な測定を確実にします。IMSセルの上流のバルブ、マニフォールド、ポンプをすべて取り除くことにより、試料とポテンシャル面との相互作用を最小限に抑えることができます。
イオン化制御試薬を試料流に加えることにより分析特性をさらに拡張できます。イオン化制御試薬は、不要な物質、検体ではない物質のイオンピークを抑制し、感度を向上させ、ポテンシャル面を減少させます(2)。図1は、施設内の気中アンモニア測定にイオン化制御試薬を用いた場合の例です。気中には多くの化学物質が存在しますが、アンモニアのイオンピークと試薬用のイオンピークのみがイオンスキャンに現れます。
図1: イオン化制御試薬を使うことにより感度が向上し、ポテンシャル面が減少します。クリーンな気中には、試薬のイオンピークだけが存在します。アンモニアが試料流に存在する場合は、アンモニアのイオンピークが検出されます。
データと結果
- 1 継続的監視と非継続的監視の比較
典型的なマニフォールド試料採取式分子汚染モニタは、試料管の選定、パージを9分間で行い、汚染測定を1分間で行い、10分毎に1箇所の測定を行います。60箇所測定用のマニフォールドシステムと16箇所測定用のマニフォールドシステム、そして一箇所測定用(一点集中監視型)の各モニタを比較したものが表1です。測定箇所が増えると、各測定箇所における一日の監視時間が減少します。測定箇所の最も多い60箇所測定用マニフォールドシステムでは、各測定箇所の一日の監視平均時間は、わずか2.4分です。図2と図3のように、長期間に亘る『分子汚染状況の変化』はマニフォールド式監視方法で行えますが、継続的監視方法により感知可能な『短時間に多発する汚染』はマニフォールドシステムでは感知できないのです。
図と表はPDFをダウンロードしてご覧ください。
表1: 継続的な一点集中型監視法を行う利点。
図2: リアルタイムのデータと長期間の平均データを同時に監視することにより、汚染発生をリアルタイムで感知し、長期間の汚染傾向を敏感に感知できます。一点集中型モニタを使用した継続的な監視方法では、汚染の発生を見逃すことはありません。マニフォールドシステムでは、多発する一時的な汚染を感知することはできません。
図3: 継続的監視は、一時的な汚染発生を感知し、低汚染レベルの汚染状況の推移を監視します。この例では、施設内のアンモニア濃度が7日間で0.075ppbから0.170ppbに増加しました。60箇所測定用のマニフォールド監視システムのシュミレーションデータも比較用に表示してあります。監視期間中にアンモニア濃度が増加したことを示してはいますが、測定回数も少なく、測定ノイズが影響しているため、汚染濃度変化の規模を正確に把握することが困難です。
反応時間とクリアダウンタイム
監視システムを検討する場合、分析装置の反応時間とクリアダウンタイムは重要検討項目です。反応時間とクリアダウンタイムに影響を及ぼす最も大きな3つの理由は、試料管の長さ、湿気を帯びた素材に対応できる化学的互換性、試料管に使用された年数です。表2に示されているように、試料管の長さは反応時間に影響を及ぼします。表2中のデータは、新しい直径1/4インチのPFA管を使用したデータです。高い濃度の汚染にさらされてきた古い管に比べ、より明確な結果を得ることができます。例えば、硫酸やリン酸などの低蒸気圧酸類が長い試料管の内壁に吸着した場合、低レベル濃度のアンモニア測定における反応時間は非常に悪くなります。AirSentry�アンモニアモニタの反応時間とクリアダウンタイムは図4の通りです。
表2: 試料管の長さは分析装置の反応時間に影響します。このデータは新しいPFA管を使用したデータです。
図4:試料管の長さを可能な限り短くし、システムの『湿気を帯びた』素材の注意深く選定することにより、迅速な反応時間とクリアダウンタイムを実現できます。
ノイズと検出限界について
この例は、監視システムを検討する上で重要な項目を描いています。監視システムの検出限界は、ほぼ常にノイズレベルにより定義されるものであり、モニタの汚染への反応やデータ出力の解像度により定義されるものではありません。フォトリソグラフィツールの多くは非常に清浄で、多くの監視システムの検出限界に近い、あるいはそれ以下であり、ノイズはこれらの環境を監視するための重要な要素なのです。気中がクリーンな状態、または気中ガス流がゼロの状態の時に発生するノイズレベルを測定する方法は、監視システム内のノイズ基準を測る便利な方法の一つです。ノイズ測定の例は図5の通りです。ノイズレベルの低い監視システムは検出限界も低いのです。一般的に、『x』を測定ノイズの標準偏差とした場合、検出限界はxの3倍となります。
図5: 測定ノイズの標準偏差は、汚染モニタの検出限界を低く定義します。一般的に、検出限界はノイズの標準偏差の3倍と考えられています。
一箇所の継続的監視またはマニフォールドシステムを用いた継続的監視を考える時には、統計的予測からデータを評価することが重要です。どのような測定にも測定エラーやノイズが発生します。エラーの原因には、電子ノイズ、環境ノイズ、界面化学効果などがあります。ランダム的なノイズが発生する場合は、複数の測定結果の平均化によりノイズレベルが低減されます。測定変動がランダムに発生する場合、測定回数の平方根により一連の測定における標準偏差が低減されます。この場合、一回の測定における測定エラーは、100回の測定における平均エラーより10倍も高いのです。一箇所の分子汚染濃度を定義する統計の平均化による影響は、図6と図7の通りです。一点集中型監視法を用いることにより、ユニット毎の測定回数が増え、結果的に、測定エラーを減少させ、短期的な汚染レベルをマニフォールド式監視システムよりも正確に定義することができるのです。
図6: 継続的に一点の集中監視を行うことにより、信号加算平均がすばらしく向上した感度を提供します。
図7: 試料平均化による感度向上の例です。
今後の課題
最近、IMS分析テクノロジーと化学分野において、目覚しい発展が遂げられています。この発展により、検出限界と測定の安定性が向上し、それに伴い、新しい課題も生まれました。新しい分析システムの能力をすべて網羅するには、低ppbとpptレベルの較正ガスが必要となります。安定したpptレベルのガス基準を維持する反応ガスを作ることは非常に難しいことです。アンモニア用の低濃度ガスの試作結果は図9の通りです。0ppb、1ppb、2ppbのデータの安定性を比較してください。1ppbと2ppbは0ppbよりもデータの安定性が低くなっていることが確認できます。結果として、低濃度では、分析装置により安定性が影響されることはない、しかし、較正ガスと供給システムが影響を与えている、ということがわかります。表面相互作用はpptレベルの濃度でさらに顕著であろうと予想されます。低濃度較正とテスト用に最適化された新しい較正ガスと供給システムが設計されています。
図9: 低ppbと低pptレベルにおいて安定した濃度の反応ガス較正基準を作ることは、分子汚染モニタリングにとって新しい課題です。
結論
重要監視場所の分子汚染を監視する最良の方法は、重点的に監視しなければならない各場所の継続的かつリアルタイムなデータを取得できる一点集中監視専用の分析装置を用いることです。この方法を用いることにより、汚染の発生を見逃すことなく、試料平均化による感度の大幅な向上も期待できます。重要監視場所にこの分析装置を配置することにより、試料管による影響も最小限に抑えることができます。新しい低価格な高感度IMSテクノロジーが、この継続監視戦略を実現します。リアルタイムな汚染データと長期的監視の継続により取得した汚染平均値を同時に追跡できるソフトウェアを利用することにより、1台のモニタで汚染発生を瞬時に察知し、長期的な流れの中で起こる周囲環境の汚染レベルの変化(約10ppt)も捉えることが可能です。
著者
Particle Measuring Systems ダン・ロディエ(Dan Rodier)
参考
- イオン移動スペクトロメトリ(Ion Mobility Spectrometry) G.A.エイスマン(G.A.Eiceman)/Z.カルパス(Z.Karpas) CRC Press ボカラトン 1994年出版
- 化学的イオン化質量スペクトロメトリ(Chemical Ionization Mass Spectrometry) A.G.ハリソン(A.G.Harrison) CRC Press ボカラトン 1992年出版
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